OpenPhoto活用事例インタビュー
変わっていく未来のために少しずつ積み重ねていく。画像のオープンデータは伝わりやすく、響きやすい。
日進市企画政策課統計係
係長 浅井 真弓 様
主任 柴田 基 様
日進市情報広報課ICTソリューション係
主査 藤原 慎 様
掲載日:2022/08/28
- インタビュアー
- 今村・下山・羽山
- 書き起こし・記事構成
- 渡辺
以上 インフォ・ラウンジ株式会社
もともと紙に印刷して市民の方に幅広く見てもらっているんだから、オープンデータにしたって何の問題もない
OpenPhotoを知ったきっかけなどありましたらお聞かせください。
浦田先生(名古屋大学)からご紹介いただいたときに、OpenPhotoを使ってみたいなという話になりまして、画像を公開する先が無いなど課題があった中で、OpenPhotoという画像をオープンデータで公開する場所を提供いただけるということでそこに乗らせていただいたという経緯となります。
画像オープンデータというのは当時、メジャーなものだったのでしょうか?
いやメジャーでは全然なかったです。まず画像をオープンデータにするというところを(他の職員に)納得していないけど協力はしていただいている状態でした。進めてみないことには皆さんのイメージもわかないということもあったので進めてきたという感じです。
どこの自治体さんも非常に苦労されているのが、まず写真をオープンデータ化することに庁内から了承が得られないということだと思います。もともとオープンデータ化に対して賛同が得られない中で、推奨データセットでもない写真というのを進めていくのが難しいという自治体さんも多いのですが、日進市さんはその辺で協力的な背景があったのでしょうか?
画像のオープンデータはあまり難しいことを考えなくて良い領域なのかなと思っています。情報広報課が持っているにっしんシティマップという紙の冊子があるんですけど、その紙の冊子に使われた公共施設の写真などは自由に使っていいよという調整ができすぐに動きました。もともと紙に印刷して市民の方に幅広く見てもらっているんだからオープンデータにしたって何の問題もないよねという発想で。OpenPhotoに載せていただいたら、他の課が作成しているマップ作成にその公共施設の写真が使われたりとか、そういう庁内の効果があったので、別にそもそも紙で出していたりとかホームページに使っている画像というのはあまり深く考えず、オープンデータでダウンロードしてもらってもいいですよ、というふうに出来るものだと思っています。「公園の保守のために撮影した画像だとか、道路の修繕のために使われた画像とかをオープンデータにして何の意味がある」という職員もいるのですが、そもそも私たちは市民の方からいただいた税金で行った活動でいろいろ公表しているものがあるわけですから、その辺は単純にCC BYライセンスを付与して後は自由に使ってくださいねっていうふうにしています。
撮影者が職員自身というのがはっきりしている写真が多いというのもありますね。写真を提供してくれている広報担当者さんにお話したら「いいよ」とわりとすんなり承諾がいただけて、写真についてはもう出せるものがあったのでやりやすく進められました。
2009年9月14日撮影
ゼロベースから始めるなら、みんなで一緒にはじめの一歩を踏み出せたらいいんじゃないかな
オープンデータ全般について、日進市さんはどのような取り組みをされているのでしょうか?
オープンデータの推進に関しては、平成26年度くらいからオープンデータの必要性を感じておりまして。また当時も「オープンデータの推進というのがこれから大事になってくるぞ。」という話もありましたのでまずは統計部門を中心に情報部門も合わせてタッグを組むことで、集まったデータをどう見せていくかということに素早く取り組めたかなと思っております。具体的には、せっかくオープンデータを進めるのであれば、近隣の自治体もオープンデータの推進をしたいと思っているであろうという発想から、日進市とその周辺自治体、合計7つの市町で自治体のオープンデータの検討会というものを立ち上げて、オープンデータの必要性などを検討していきました。その中で共通のフォーマットを使ってオープンデータを出していこうという話になり、ちょうど国の方の推奨データセットとほぼ同時期に検討会のオリジナルフォーマットでオープンデータを出していくという取り組みが始まりました。その結果、周辺の自治体さんからも一緒に研究してみたいとか、ちょっと事例を教えてほしいとか、県内の他地域からも取り組みとして教えてほしいと言われたり、愛知県にもバスの情報のような取り組みの優良事例があるということでノウハウを提供したり、そういった取り組みをしてきました。
近隣の自治体も巻き込んで、啓蒙というかオープンデータを活用していこうという契機が何かあったのでしょうか?
オープンデータの推進自体がそもそも初めての領域であったので、「ゼロベースから始めるならみんなで一緒にはじめの一歩を踏み出せたらいいんじゃないかな」というのもあり、良いようにまわっていったんじゃないかなと思います。
あと庁内ではデータを使おうという取り組みを重視しており、例えば総務省のデータアカデミーというのにも手を上げて参加し実際にデータを使ってみる取組をしたりですとか、シビックパワーバトルの方にも2年連続で参加させていただいたりしています。市民の方にオープンデータを使っていただいて、そこからデータを使うという事の大切さというか重要性というのにも気づいていただいて、それをもとにオープンデータの次のニーズにつながっていくという取り組みに繋がればなあと思って、進めております。
2010年4月2日撮影
市民の方からの問い合わせや要望に応え、徐々にサイトの認知度が広がってきているのかなという感触
OpenPhotoのサイト自体を公開したときの反響はどうでしたか?
市民の方から別の課に「こういう写真無いですか」と問い合わせがあったときに、「OpenPhotoというサイトに日進市が公開している写真がありますよ」と日進市のホームページで画像サイトをご紹介させていただけた。市民の方からは「ここにいろいろ写真があるんですね。ではここから使わせていただきますね」というお話が出来て、庁内外で徐々にサイトの認知度が広がってきているのかなという感触があります。
使いたいっていう人から連絡が来るっていうのはすごく嬉しいですよね。
そうですね。ただ写真がまだ少なかったので、「別の角度のアングルの写真とかもっとないですかね」といった意見をいただきました。市を紹介するチラシのようなものを作りたいとのことだったのですが、その時は一方向のアングルの写真しかなかったので、その後に別角度の写真を原課から提供いただいて公開して増やしました。
浅井さんがOpenPhotoを使った写真データの公開に関わるようになった経緯についてもお伺いできるでしょうか?
私と柴田は統計係で国勢調査などの調査をするのがメインの仕事ではあるのですが、統計係でオープンデータの公開なども行うということになっておりまして、その関係で7市町のオープンデータ会議に事務局として参加したりしています。OpenPhotoも浦田先生からご紹介をいただき、公園や花の写真、庁内で要望のあった写真を一緒に仕事をしたことがあるような頼みやすい人に頼んでデータをもらい、それをOpenPhoto を使って掲載しています。
自治体さんの場合一事業を一人で担当されている場合もあるので、その時にお互い助け合える体制があるというのはすごいですね。縦割りになりすぎないというところが日進市さんの素晴らしいところかもしれないです。
未来を見据え、今のうちから少しずつ積み重ねていくのがオープンデータ
日進市さんとして、他の自治体職員の方々や公共関係者にお伝えしたいメッセージはありますか?
オープンデータという単語は、情報システム部門に偏った言い方になるかもしれないですが、予め基準を作る作業だと思っています。国の自治体へのデジタル化推進に関する各種計画の中で、オープンデータも一応しっかりやってねと示されてはいるもののちょっと影の存在にオープンデータの推進があると思っているんですけど、でもデジタル化した社会の新しい価値観を生み出していくということの一番元になっているものが実はオープンデータだと思っています。まだ取り組むのは先なのかもと思っている方がいるかもしれないですが、いずれ変わっていく未来を突然やれというのはなかなか難しいので、今のうちからちょっとずつ積み重ねていくと、いざDXが本格的になって社会が変わったときにズラッと整理されている状況がいいんじゃないかなと思います。そういう受け止め方をしているので、オープンデータの推進はこれまで統計係も全く手を緩めることもなく進めてこれたところもあるので、他の自治体さんももう少し先の話を見て今やるべきことをちょっとずつ積み上げてくださったらいいなと思います。また、推奨データセットとかカタログサイトを立てようとかこだわらなければ、画像のサイトというのはITのリテラシーがそれほど高い方じゃなくても容易に使えるもので、実はこの画像のオープンデータの整備が一番伝わりやすい・使われやすい領域なんじゃないかなと思っています。
今後とも写真とかは増やしていきたいな、継続して行きたいなというのはすごく思っているので、私たちも庁内の方々にアプローチは続けていきますし、他の利用者さんとかのお話も聞いて是非取り入れて行きたいなと思ってます。以前課内でオープンデータの動画をあげることが話題にあがったことがありましたが掲載するサイトがありませんでした。動画もあげられるというのを以前の講演でお聞きしましたので、動画にも手を出していきたいと思っていますので、今後とも宜しくお願いいたします。
どんな動画をあげようと考えてますか?
写っちゃいけないもののチェックとか写真より大変ですけど、シティプロモーションにつながるような動画とか、せっかく動画あげられるんだったらオープンデータらしい使い方が出来るように短い素材の動画などを考えられたらいいなと思っています。
OpenPhotoとはあまり関係ないかもしれませんが、先週オープンデータの研修をやった時に、こういう公共施設の写真を載せたらいいんじゃないかとかいうお声もあがっていました。今までオープンデータって職員の人にどう思われているんだろう、あまり興味が無いんじゃないかとか、ちょっと面倒くさく思われるんじゃないかと思っていたんですけれども、考えていたよりも反応が良くて、写真っていうのはやっぱりパッと見てすぐ目でわかるのですごく分かりやすく、こういうのがオープンデータにあるんだなということをわかっていただくだけでもこれからのオープンデータの推進に繋がって行くんじゃないかと思っています。
取材日:2022/03/15